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フリージャズ&フリーミュージック1960~80:開かれた音楽のアンソロジー

フリーミュージックとは一体どんな音楽なのでしょうか。実はその答えは簡単ではありません。なぜならフリーミュージックと言う固定した音楽ジャンルが存在するわけではないからです。しかし、あえて言うならアート分野におけるハプニングやパフォーマンスと同じように、常に慣習的なスタイルやフォルムに対してアンチテーゼを喚起する音楽といってよいでしょう。従って、固定化し、制度化したらそれはもはやフリーミュージックとは言えないでしょう。
そう言う意味において1960〜80年という20年間の音楽シーンを語るなら、フリー・インプロビゼーション(自由即興)による音楽、具体的には「フリージャズ」と現代音楽の「集団即興」がフリーミュージックとして想起されることにそれほど異論はないと思います。そしてフリーミュージックこそ社会へ深い眼差しを向けると共に、文化全体の中で音楽を喚起すると言う音楽のもっとも本質的ものが反映されていると私達は考えるのです。しかし、フリー・インプロビゼーションの音楽はもう古いという言説が聞こえてこないわけではありません。と言うのも今日デジタル表現によるメディアアートやコンピューター音楽などが盛んに作られているからです。
ところが、ヨーロッパでは今日でもフリー・ジャズはもちろん、前衛の流れを汲む実験映画やビデオアートも盛んに作られ、大抵の映画祭、映像祭にはexperimental部門が存在します。それに比べ日本ではアートも音楽もすべてが一時の集合的沸騰の流行でしかありえず、昔から本質的な問題が未解決なまま、次へ進んでしまう傾向にありこれでは成熟した文化とは到底言えません。そもそもポストモダン以後のアートや音楽もそれまでの前衛芸術・音楽があったからこそ存在しているのです。従って私達は過去の地平に現在の状況を重ね合わせ、連続する文化を構築する一助としてフリーミュージックにおけるアンソロジーの必要性を強く感じ、フリーミュージックの本を出版するに至ったのです。

 

Chap Chap Records企画制作
1
.変革の季節 
副島輝人
2.フリー・ジャズからフリー・ミュージックへ 
横井一江
3.即興演奏とレコード
Onnyk 金野吉晃
4.AACM突撃日記
豊住芳三郎
5.間章「<なしくずしの死>への覚書と断片」読解
川口賢哉
6.音楽の解体へむけて「Vedda Music Workshopの時代」
風巻 隆 
7.フリーミュージック:Chaosmosの実践プロセス
河合孝治 
8.「即興」に向けた断片による試論
宮田徹也
9.「即興論序説」 
志賀信夫
10.コンセプトと自由、、Freejazz
山下史朗

*ディスクガイド 
金野吉晃 末冨健夫 横井一江 
河合孝治 牧野はるみ 川口賢哉 豊住芳三郎

 

フリージャズ&フリーミュージック1960~80:開かれた音楽のアンソロジー   (ディスクガイド編)

 


本書は前衛(アヴァンギャルド)音楽という言葉がふさわしかった、1960年から1980年までのアクティブな音楽ディスク(アルバム)を紹介しています。本書は本書に先立って2017年に出版した、「Free Music 1960〜1980:開かれた音楽のアンソロジー(ディスクガイド編)」(ちゃぷちゃぷレコード企画・TPAF発売)に録音データを加えると共に、紹介しているディスクはフリー・ジャズが多くを占めているため、タイトルも「フリージャズ&フリーミュージック」と改め、新たに出版したものです。尚、紹介しているディスクは主として「ちゃぷちゃぷレコード」の末冨健夫が40年以上に渡って、収集したアルバムから選ばれています。内容はフリージャズを中心に、現代音楽の集団即興、実験的ロック、アート分野のパフォーマンス、現代作曲家による即興を含む作品、またメインストリームに位置する世評の高いアルバムも加えて全部で400枚ほどです。 

執筆者:末冨健夫、金野吉晃、河合孝治、横井一江、豊住芳三郎、川口賢哉、牧野はるみ、織田理史

フリージャズ&フリーミュージック1980~2000 : 開かれた音楽のアンソロジー(ディスクガイド編)

 

本書は先に出版された、フリージャズ&フリーミュージック1960〜80: 開かれた音楽のアンソロジー(ディスクガイド編)の続編で、1981年から2000年までのアルバムを紹介しています。この時代はポスト・モダンの時代、「新しさの終焉」「前衛の終焉」、などとよく言われ、音楽も多様化し一様な音楽の流れでは捉えきれなくなりました。しかし他ジャンルとの融合、コラボレーションなどが盛んになった時代でもあります。そのような特色も踏まえ、フリージャズを中心にフリーミュージック、環境音楽、インスタレーション、電子音楽などについても紹介しています。

 

 

執筆者:末冨 健夫、金野 吉晃、河合 孝治、小森 俊明、漆舘 登洋、 齊藤 聡、織田 理史      

川口 賢哉、近藤 秀秋、田中康次郎牧野 はるみ大木 雄高   

 

 

Art Crossing 創刊号 : 特集 池田一と水たちよ!

1980年以降様々な分野で「ポストモダン」と言う言葉が盛んに使われ、不安定で流動的な社会の基、それは「価値の相対化」「大きな物語の終焉」などと言われた。あれから数十年がたち、相変わらず私達を取り巻いている社会状況は不安定で流動的なように思える。が、しかし冷静に考えて見ると社会が安定した時などいままであったのだろうか。そもそもアートも自然も、人間も流動的で不確実だからこそ新たに繋がり得るのではないか。従って私達が開かれた社会やアートを望むならそのような無常の世界に喚起する以外に生きるすべはないのかもしれない。従って大事なのは私達人間は自然や世界との静的な共生を望むより、動的で無固着な共生成(あるいは共創成)にあるのではないだろうか。
創刊号はアース・アーチスト池田一の特集である。池田一は地球環境問題、特に水に関する問題と強く結びついたアートワークを世界的規模で展開し内外で高い評価を受けている。その作品やパフォーマンスは水=身体を通じて触覚、嗅覚、直観を研ぎすませながら、自己と世界との相関、対話、そして葛藤を通じ、万物の根源である水というシニフィエに伴われた数限りないシニフィアンがあらゆる方向へ拡散し、天地万物、壮大な自然と宇宙へと繋がっていくのである。それは水も身体と同様に固定のない生成や流動であり、自然も宇宙もまた同様だからである。そのような池田の試みを触視的空間と名付けておこう。(河合孝治)

 

池田 一(いけだ いち)京都大学卒。地球環境問題、特に水に関する問題と強く結びついたアートワークを世界的規模で展開し内外で高い評価を受けているアーティスト。1991年、第21回サンパウロ・ビエンナーレでは、特別招待アーティストとして、日本人で初めてメイン・ステージを担当(ちなみにその前年度メインステージはヨーゼフ・ボイスであった)。 1995年、国連50周年記念アートカレンダーではクリストやイリア・カバコフらと共に「世界の12人のアーティスト」に選抜された。 また2008年5月には、ニューヨークの国連本部で行われた環境セミナーでは東・東南アジア、オゼアニア地域の代表として選抜され環境アートプロジェクトからの提案を行う。 さらに2012年東京都の要請で上野公園不忍池全体を使った環境アートを実現。不忍池の設置作業には年齢・職業・国籍を超えた600人のボランティアが参加。1ヵ月間の展示に約100万人もが訪れたという報告もある。

 

(1)Chaosmos:間-共創成へ向けて」・・・河合孝治
特集池田一& Waters
(2)『池田一・インタビュー』
(3)『フォト・ギャラリー「Ichi Ikeda Earth Art」』・・・池田一
(4)『WATER POLITICS』・・・池田一
(5)『Waterpolis@Delhiデリー日記&水句』・・・池田一
(6)『池田一/屋久島アースアート「天水の島」レポート』・・・織田理史
(7)「池田一論序説」・・・宮田徹也
(8)『水奏:Water Crossing project With 池田一(Ichi Ikeda)』公演評・・・宮田徹也
(9)「池田一とガストン・バシュラールにおける水の形而上学―存在論化された水と形態を巡って」・・・織田理史
(10) 池田一略歴
(11)「水」・・・らり琉0郎(山下史郎)
(12)『水の思想 -シモーヌ・ヴェイユと折口信夫』・・・今村純子
(13)『雨を題材にした音楽ーこどもの歌を中心に』・・・斎藤恵
(14)「Composition: Horizontal Half / 水平構図」・・・相田アキラ
(15)「現代のダンスという未知なる領域へ、あるいは多木浩二へのオマージュ」・・・小森俊明
(16)「汝の傷を見せよ―パフォーマンスアーティストと傷跡」・・・北山聖子
(17) Water Disk Review・・・末冨健夫、小森俊明、織田理史

 

Art Crossing 第2号 : 特集 豊住芳三郎

豊住芳三郎は1960年代から今日まで、世界屈指のフリージャズ/フリー・インプロヴィゼイションのドラマー(二胡奏者でもある)として世界中を日夜飛び回って演奏を続けています。 
1960年代の日本のフリージャズ黎明期には、そのパイオニアとして高柳昌行、吉沢元治、佐藤允彦、山下洋輔、高木元輝らと行動を共にし、70年代では阿部薫とのユニット「オーヴァーハング・パーティー」、自己のユニット等での活躍。80年代以降は、Wadada Leo Smith、John Zorn、Misha Mengelberg、Han Bennink、Evan Parker、BarrePhillips、Pual Rutherford、Derek Bailey、Sunny Murray等々の召喚・ツアーを数多く行い、それまでレコード等でしか接することのできなかった世界のインプロヴァイザーを我々に紹介してくれた功績はとても大きいと言えます。 
また最近でも中国、ギリシャ、トルコ、チリ、アルゼンチン、ブラジル、フィリピン、ニュージーランド、トルコ、チリ、パプアニューギニア等々を廻り、現地のインプロヴァイザー達と交流を深め、Living Legendとして大きな尊敬も受けています。 
そうした世界各地を旅して来た視野の広さと感性の鋭敏さとが、彼の演奏に大きく影響を及ぼし、世界にも類を見ない独自の演奏スタイルを生み出しました。さらに彼自身のポテンシャルなエネルギーに会場やドラムの質、共演者のスタイルや力量等々に合わせてクロッシングする柔軟性が共起し、強烈な個性と多彩なパフォーマンスに聴衆は強い印象を受けることでしょう。 
そのような豊住芳三郎を多角的に光を当てようとするのが本書です。親しい者(ある意味戦友達)からの手紙やエッセイも含めて、現在まで、そしてこれからの豊住芳三郎を読み解いていただけたら幸いです。 (末冨健夫、河合孝治)

 

目次

 

プロローグ

022   豊住芳三郎の豊饒なる放浪・・・・・・・・・白石かずこ
025  豊住さんへ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・牧野はるみ

026   豊住芳三郎 私の叔父貴・・・・・・・・・・・・・・・HICO NATSUAKI                                              
027  ‘70年代の日本ジャズを支えるもの・・・・・・間 章
029   豊住芳三郎さんと演奏・・・・・・・・・・・・・・・原 尞                    
031   サブ・豊住芳三郎さんのこと・・・・・・・・・・・・・・ 佐藤允彦
033   旅の人・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・高橋悠治
035   AACM突撃日記・・・・・・・・・・・・・・・・・・豊住芳三郎
044   Power of Life・・・・・・・・・・・・・・・  Julien Palomo
051   “Sabu Photo Gallery#13〜#15”                   
054   サブ回想記 & 語 録 ・・・・・・・・・・・豊住芳三郎
068   “Subuアーカイブ#1〜#18”
086  豊住さんとの事・・・・・・・・・・・・・・・近藤秀秋
090   ニコラス・レットマン・バーティノヴィック&川口賢哉 デュオ
      日本ツアー2016 スペシャル・ゲスト:豊住芳三郎・・・・・稲岡邦弥
094   毒と薬、ユーモアと反骨精神・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・豊住芳三郎
096   レビュー for Sabu ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ ・・・・副島輝人
103   カフェ・アモレス時代と豊住芳三郎・・・・・・・・・・・・・・・末富健夫   
127  豊住芳三郎 参加ディスクガイド・・・・・・末冨健夫 豊住芳三郎  望月由美                                                                 
                       Jean-Michel van Shouwburg
                           河合孝治   織田理史 小森俊明  
Art Crossing Colum
178 池田一/屋久島2017 アースアートプロジェクト『円水の塔』レポート・・・・・織田理史
186  ジャズ教本のアンソロジー/対機テキストへ向けて・・・・ 河合孝治   
作曲から即興へ/自身の経験を振り返って・・・・・・・・・・・ 小森俊明

Art Crossing 第3号 : 特集 高木元輝フリージャズ・サックスのパイオニア 


高木元輝さんは、日本のジャズ史に歴然と輝くものでありながら、生前にリリースされたアルバム(CD,LP)はその存在の大きさに比してそれほど多くはありません。
従って、ジャズ・ファンの中で、今まで固定的なイメージを作りにくい人だったかもしれません。たとえば、生年月日や生誕地すら間違って伝えられていたくらいです。この度、高木さんの姪御の李由紀さんから、正確な生年月日と生誕地が伝えられました。それは、1938年9月14日京都府左京区生まれ。在日の2世になります。李家の族譜によると高木さんは35代目に当たるのだそうです。従ってやっと訂正が加えられたことになります。
本書では、高木さんと生前共演をしたミュージシャン、高木さんの友人知人からの思い出話、海外からのメッセージ、貴重な写真、研究論文、ラヴレター?そして、決して完全とは言えませんが、アルバムも紹介しています。またこの編集に当たって未発表音源を募ったところ、数か所から驚くような音源も想像以上に私達の元に集まって来ました。音質的にCD,LPでリリースするには困難なものも多かったのですが、その中で共演回数が最も多かった小杉武久氏との音源もありました。そのため「ちゃぷちゃぷレコード」の制作によって「小杉武久&高木元輝:薫的遊有無」というCDが、本書の出版と同時期に発売が可能となったのでした。また関連する情報として、キングインターナショナルから5枚組のアルバム、さらに吉沢元治との3枚組のアルバムも発売されました。
そしてあらためて思うことは高木さんは、日本を代表するプレイヤーにとどまらず、世界の20世紀ジャズ・即興シーンを代表するサックス奏者の一人だったと言えるのではないでしょうか。
本書が、そのような高木元輝さんの再評価と、新たな情報の礎になれば幸いです。
いずれにしろ本書の出版には、多くの執筆者及び関係者の方々のご協力があってこそ、実現できたことは言うまでも有りません。
ここにあらためて深い感謝を申し上げる次第です。(末冨健夫、河合孝治)


  

池田一(いけだいち) Earth Art 三部作

国連の地球環境セミナーで、アジア・オセアニア代表として招待スピーチをするなど、世界のアースアートをリードするアーティストのひとり、池田一。

アートの領域を超えて、地球環境の危機に向き合う渾身の本づくりで、写真・ドローイング・図版満載の全344ページの話題の「Earth Art Manual アースアートのトリセツ」を刊行。 いま、世界各地で頻発している、若者たちによる地球温暖化への抗議デモ。国籍、宗教、性別を超えた、彼らは独自な「地球の書き手」だ。

この「アースアートのトリセツ」では、「『地球』の読者から、書き手になろう!」と熱く呼びかけている。横行する自愛・自国主義の中で、「誰しもが平等に向き合える『公共性』は、地球しかない。」と、アースアートは語りかける。時代を先取りした、世界に例のない万人必見・必読の、そして「地球の書き手」への手引書である。 

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世界のアースアート・シーンをリードする水のアーチスト池田一はまた日本のパフォーマンス・アートの先駆者でもある。本書は世界中で行った池田一の活動の全貌を紹介するとともに、その本質を読者と共有しながら生み出す世界へのメッセージでもある。

初期の「水ピアノ」「水鏡」「アクション・テキスタイル」などから、サンパウロ・ビエンナーレでの歴史的なオープニング・パフォーマンス、国連50周年記念アートカレンダーを飾った「アース・アップ・マーク」、NY国連本部で行った地球環境へのメッセージ・アクション、また東京都の要請による上野公園不忍池全体を使った環境アートでは設置作業に年齢・職業・国籍を超えた600人のボランティアが参加。

1ヵ月間の展示に約100万人もが訪れたという報告もある。さらに、ニューヨーク、フロリダ、ピッツバーグ、サンタフェ、メラノ(イタリア)、フィンランド、ジャグジャカルタ、ホンコン、シンガポール、デリー、バンコク、台湾、新潟、阿蘇、川口、屋久島、などで行った「流動する劇場」や「都市河川の再生プロジェクト」、その一連の活動は類を見ないダイナミックな連続である。「未来に向けて、何が出来るか」、「?アースアート・アクション110事典」は、実践し、提案し、共創して、あなたと共生するための必読書である。「一日一事」、一日一アクションをモットーに、読み進んで見てはいかがだろうか。

池田一が世界各地で展開してきたアートプロジェクトを中心に、その困難なプロセスを乗り越えていくストーリーから、「アートを読む」という新体験へ。分断や排斥がまかり通る政治や経済のシステムに、組み込まれていく文化やアートの文脈。世界のアートシーンを未来に向けてシフトするアーティストとして、世界的に期待される池田一が、その閉塞状況を突破するために『アート以後のアート』に向き合う。この本を通して、いま高らかに『ポストアートの到来』を宣言したい。
美術館やギャラリーといった既存の制度に依存するのではない。それらの閉塞状況から、表現の自由を解放する『アート以後のアート』へのプロセスである。通常の政治や経済の論理と真っ向に向き合って、『アートのフィールド』を革新し続ける。「アースアート・ストーリー」で、具体的に挙げると、「東京/上野不忍池」、「限界集落・木口屋」、「世界自然遺産・屋久島の海岸」、「デリー/元ムガール王朝水路跡」、「シンガポール/超高層ビル群の中の池」など、「ポストアート」のフィールドに境界はない。「全ての場所に世界発信力がある」という信念のもとに、地球環境の危機に向き合うために、既成の場所や地域に、新しい流れを創り出す。「池田一は、かってない流れを生む」と言われる。
その「アート・フィールドの出現」のためには、完成品を見るだけの従来の固定的な視点とは決別したい。いま肝心なのは、出現へのプロセスを共有する視点である。場所との遭遇、通常の場所を革新する様々な困難、常識との戦い、金銭的交渉、出没するトラブルを乗り越えて、人々との出会い、協働へと向かうプロセスを、語る必要がある。それぞれのストーリーは、立ちはだかる政治や経済の枠組みを超えて、表現の自由、未来への協働の可能性、新たな民主主義などを探求し、実現化に向かう生々しい出来事の連続だ。
米国NY州の中学生が水のシンポジウムを開くのに、世界中からアーティスト・池田一を選抜した。彼らの曇りのない目には「新しいフィールドの開拓者」と映ったに違いない。
この本は、制度から解放され、表現の自由を求める人たち、人間の可能性を身近に感受したい人、そして何より一歩でも前進したい全ての人にとって、心強い仲間となるためのテキストとなるだろう、ポストアート宣言は、人間解放宣言である(池田一)。


ICHI IKEDA 50 EARTH ART : アースアートは未来の地球を創る 池田一+児玉龍郎(序文:John K Grande)

 

日々逼迫する地球環境の危機に真っ向から向き合うEARTH ART が未来の人間社会を活性化するアート文化をリードする!日英ハイブリット版。

Ichi Ikeda uses water as his main medium. Water is a choice that strongly connects Ikeda to a global movement involved with water rights, and broader environmental issues. Ichi Ikeda expresses these concerns with a true spirit of innovation and exploration, and he does not abandon the public in so doing. His projects involve communities of volunteers, and build forums for discussing social and environmental issues and concerns. His community activism, public performances, and interactive installations are all part of "Ikeda Water". Ikeda Water includes projects like Water Piano, Water Mirror, Earth-Up-Mark, United Waters, the Big Hands Conference, the Manosegawa River Art Project, the Water Market Project, 80,000 Litre Water Box and Yakushima Island. Sustainability can guide us to understanding the resilient and integrative capacities inherent to nature. Nature's structures are procreative interactive living designs - a response to the many forces of variability and diversity that come togetherin nature. All these living elements, ourselves included, are mutually connected.

Kodama's photographs are witness to the moment in the actions, interventions of Ikeda's art. With a modest and sharp consciousness, Kodama captures with a sense of the moment, of the event of the art action. An example is Seven Gatepoles - the original conception and the re-creation of first growth forest stumps - these tree stumps are the guardians of water. The 5 Greenscapes extand more ambitious linkages to environment, give a hand to place, and our place in all this nature.                                                  (John K. Grande)

 5 0 EARTH ARTS - 世界50箇所以上でアースアートという環境アートのプロジェクトを実現してきた池田一の、パフォーマンスや作品を記録したものである。また児玉龍郎の写真集でもある本書は、彼の常に存在する鋭い眼力なしには、この記録はより鮮明なものとならなかっただろう。ただの水ではなく、水が動き、その動きが生きた奇跡を現出している。池田は、一人ひとりを「水主」と考えている。人種や宗教、地政学的な状況に関係なく、先祖や世界中の人々のために水を未来に送り出す人である。環境的な水ネットワークや水市場も、すべてこのビジョンの一部である。天空の川から地上に循環し、変容し、還る。そして、水の流れは、私たち自身の中にもあり、私たちの心さえもパターン化し、形づくることが出来るのである。

 

池田一+小森俊明:日本のアート文化の今を撃つ!

「 標準的なアートの歴史では、初期の『ランド・アート』から、大阪出身のアーティスト・池田一のような現代の『エコ・アート』へのシフトについて記述するだろう---」これは、米国のミネソタ大学出版局が出版した「Ethics of Earth Art アースアートの倫理学」を紹介する文章の一節である。
自然環境や地球環境をテーマにしたアースワークやランドアートが展開されて60年間、地球環境問題への逼迫感が世界的に高まるにつれ、環境とアートとの関係は変化してきた。その歴史を分析し、総括したこの書物における結論の章「地球に倫理的に向き合う」で主に取り上げられたのが、池田一であった。要するに、地球環境問題を、政治や経済の文脈にはない創造的な視点でとらえる「地球環境アート」は、歴史を刻むターニング・ポイントなのである。
しかし、これだけ明快な歴史的位置付けがあっても、 それを読み取り展開する文脈は、残念ながら日本にはその端緒すら見当たらない。 何もかも新しい動きを現代アートで処理して垂れ流してしまう日本のアート文化という澱みと闘わざるえない日々が虚しく過ぎていく。このどこまでも混沌とした社会の表層を上書きするだけのアート文化に真っ向から向き合う表現者はいないものか?
そんな切迫感に共鳴した河合孝治が主導して、コロナ禍の最中にクラウドファンディングで「アースアート3部作」 の刊行に至った。 その3部作のひとつ「アースアート・ストーリー」を丁寧に読み解き、表現現場の当事者の視線で論じてくれたのが、音楽家・作曲家である小森俊明であった。日本のアート文化の「今」に真っ向から向き合う表現者たちとの、確かな出会いであった。
「最近、何を作っているのか?」と、誰彼なく聞かれる機会が少なくない。そんな時、ためらわず、「歴史を創っている」と答えるようになった。日本の将来を憂う君に語りかけたい。「地球環境アートが、全ての初めであり終わりである時代が来る」という予感を伝えたい。その重大な予感を充分に読み取ることが本書「池田一・地球環境アートシリーズNo.1/ 日本のアート文化の『今』を撃つ!」から、からできるだろう。そのために、再度読み直して欲しい。次に向かう言葉を、一緒に迎え入れるためにー。(池田一)
世界で活躍しているアース・アーティストの中にあって、池田さんの思想とその実践の仕方は独特である。それは、自然を利用し、時に改変して作品を提示する西欧的合理主義の思想とは異なる。彼はあくまでも自然の原理に寄り添い、敷衍する形で作品を提示する。そのことにより、観る者に自然と地球環境についてアートを通して主体的に考える契機を提供し、地球市民として環境問題の解決に向けての行動を具体的に実践することを促しているのだ。アートというのは往々にして社会の中で特権的な位置を占めやすい。社会、とりわけ日本社会の中で現代アートという領域が等閑視されているのにも関わらずである。しかし池田さんは現代アートが持つ大文字の制度のうち、特権性なるものから自由であるのだ。(小森俊明)


他、池田一著作一覧




無分別智の現代音楽:ジョン・ケージからメディアアートまで                                                                                             河合孝治 


目次
はじめに
・Chaosmos:間-共創成へ向けて
・無分別智の芸術:ジョン・ケージからメディアアートに気づく
・フリー・インプロビゼーション
・湯浅譲二の音楽思想
・近藤譲とポスト構造主義
・仏教美学:無分別智の芸術から共創成へ
・美術家にして音楽家:西良三郎の共感覚
・横尾龍彦帰国記念展覧会「みちすがら」トークセッション
『今日の芸術の役割と意義』      報告と感想
・ライナーノーツ by 河合孝治
・即音・無分別
・ジャズ・ピアノ&作・編曲教本のアンソロジー

 分かるは、分けるとも言いますが、人は事物を分別(ふんべつ)して、その数をどんどん増やしていく。国籍、年齢、性別、優劣、損得、善悪、、、、、しかし、過度な分別は差別や偏見を生む要因ともなるのです。そのため、仏教では分別は否定され、無分別が勧説される(仏教用語では「無分別智」と言う)。
ただし、「無分別」とは、無秩序やデタラメのことではありません。固定された事物の分別を一旦無記とし、そこから新たな事物と事物の関係を構築することに他ならないのです。換言すると世界をありのままに見ると言うことです。
例えば、宇宙飛行士は、宇宙船から地球を見た時、国境がないのに驚き、人生観が変わると言いますが、それは我々が通常認識しているのが分別された地図による色眼鏡の世界だからです。

 音楽でもそれは同様です。音楽は音楽からは作れません。従って固定された音楽という分別から開放された「無分別智の音楽」、つまり「音楽でない音楽」を表現し続けることが必要ではないでしょうか。それはまた「音楽とはなにか」という単純かつ究極的な問いにもなるのです。
本書はそのような「無分別智」の理念の基、2004年以降、拙書、雜誌、展覧会カタログ、アルバムライナーノートなどで、表した文章を若干加筆し、まとめたものです。尚、中には重複する文も含まれてるため、その部分は削除することも考えましたが、文章全体のバランスを考え、そのまま掲載したことをお断りしておきます。
いずれにしても読者の方々が、本書を読まれ、若干の刺激と功徳を感じていただければ幸いです。        

現代音楽とメディア・アートの空観無為:                                                                               河合孝治、小森俊明、織田理史

1. 現代音楽をめぐる諸問題について・・・・小森俊明
2. Chaosmos:間-共創成へ向けて・・・・・河合孝治
3. 森村泰昌の四半世紀ー変容の変容を追って・・・・小森俊明
4. 無分別智の芸術 :ジョン・ケージからメディア・アートに気づく・・・河合孝治
5. 「反-自動化主義」宣言 -メディアアートと科学技術の相関主義への批判・・織田理史 
6. フリー・インプロビゼーション・・・河合孝治
7. 「現代のダンス」という未知なる領域へ、あるいは多木浩二へのオマージュ・・・小森俊明
8. アプリ・アート試論―その特異性の出現と消失・・・織田理史

 

本書は即興ユニット「空観無為」のメンバーである河合孝治、小森俊明、織田理史の3人のアーチストによる共著である。
内容は音楽、造形、メディア・アート、ダンスなど多岐にわたっている。なぜなら、3人に共通しているのは、その表現方法が、音を中心としながら、多様なジャンル、メディアに関心をもって繋属しているからである。
そして今回本書を出版したのは、本と言う言語テキストもまたアート表現の一つとして重要だと考えるからであるが、また広義ではアートも含め、あらゆるものは言語分別によって成立しているとも言えるのである。しかし、どんな表現もそれ自体、私達は絶対視しているわけではない。それは今更、差異や脱構築と言ったポストモダンの思想を持ち出すまでもなく、一冊の本も執筆しなかったソクラテスと釈迦の行いを知れば十分であろう。
ソクラテスにとって言葉は「語るべき人には語り、沈黙するべき人には沈黙するという術を心得ているもの」でなければならなかった。本を書いてしまうと、著者の意図や本質から離れて理解されてしまうからである。従ってソクラテスは産婆術と言う、対話を通じて相手と共に答えを模索していくことを選んだ。
一方、釈迦は「対機説法」と言う相手の性格や能力、素質に応じて、相手が理解できるように法を説くと共に、自分の教えさえ絶対なものではなく、どんなに素晴らしい教えであってもそれは暫定的なものに過ぎず不要になれば捨てるべきだと考えたのである。
つまり大切なことは、いつでも大変な時代、転換期の時代と不安を煽るマスコミの言説に一喜一憂することなく、また絶対的な真理や的確な答えを求めることでもない。大切なのは他者との対話を通じて他者に対して、批判力や判断力を持ちつつ、自己自身を反省し、自己を見つめることである。
そして宇宙の基調はあらゆるものが相互に関係し合いながら常に「生成・変化・消滅」を繰り返していることを考えると、アートはそのような世界において、固定された分別を否定する無分別心を常に保ち続けること、還元すれば「音楽でない音楽」、「アートでないアートを」常に探求し続けることが必要だと思うのである。「空観無為」とはそのような試みを示しているのである。

新・仏教美学:柳宗悦から現代音楽&アートへの展開                                                                               河合孝治

仏教美学」とは「民芸運動」で有名な柳宗悦が到達した思想的到達地点です。

「民藝運動」による工芸理論を得ても、まだ思想的確立の根本的な美的思想を見つけるには至らなかった柳が、『無量寿経』四十八願の第四願「無有好醜の願」に接した時、その内容が「形色不同」や「好醜」の分別を行わないことから、それを「不二美」と称し、これが仏教美学の基本思想となりました。

「不二美」は仏教思想に依拠するなら「無分別智」の一つのスタイルと思われますが、柳はとりわけ伝統的な仏教芸術のみを「仏教美学」の対象としているわけではなく、あらゆる芸術に仏教的原理が働いていることと、仏教的な理念で解釈しなければ、美の謎を説くことができないものがあることを強調しているのです。

 私はこの柳の考えに深く共感します。本書は現代音楽、環境アート、メディア・アートなど柳が生きた時代にはなかった様々なについて言及していますが、それらは「仏教美学」の思想で解釈すれば、比較的容易にその本質を解明できると思います。つまり、仏教美学はそうした現代アートを支える思想として、またアートの実践として時代を超えて対峙できるものです。

 尚、本書は先に出版した『無分別智の現代音楽:ジョン・ケージからメディア・アートまで』と同内容のものが多く含まれていますが、それらはできる限り加筆し内容に幅を持たせるようにしました。 

 いずれにしろ「仏教美学」は過去のものではなく、現代アートを反映する生き生きとした、思想と実践の源であると思うのです。

 

第1章 仏教とは何か?・・・・・(5)

第2章 柳宗悦とは?・・・・・(8)
2. 1 仏教美学に至るまで 2. 2 朝鮮の陶磁器 2. 3 民芸運動と民藝
第3章 仏教美学とは・・・・・(23)
第4章 分別と無分別・・・・・(32)
4.1言葉による分別 4. 2 維摩経 4.3 金剛般若経
4. 4 関係性(縁起)4. 5 生成・変化・消滅(無常)
4. 6 中論
第5章 (ポスト)構造主義と仏教・・・・(47)
第6章 仏教美学の実践:一遍上人・・・(58) 

6.1捨聖 6.2 踊り念仏
第7章 河井寛次郎の造形・・・・(69)
第8章 現代アートにおける無分別智~ジョン・ケージの音楽~・・・(75)

8.1 4分33秒 8.2 湯浅譲ニ『ヴォイセスカミング(1969)』   
8.3 アルビン・ルシエ
第9章 瞬間の芸術・・・・(84)
9.1瞬間の芸術 9.2 芭蕉の俳句
9.3 フルクサス:ジョージ・ブレクト 9.4 水琴窟
第10章 サウンド・アートとメディア・アート・・・(90) 
第11章 メディア・アートとしての音楽・・・(94)

11.1 インターラクティヴィティ
11.2 Csoundで映像を制御するための種々の方法。
第12章 フリー・インプロビゼーション・・・(106)
1.自由とは
2. オートポイエーシスとアフォーダンス
3. 自己了解の音楽
4. タージ・マハル旅行団
第13章 湯浅譲ニの音楽思想・・・・(127)
第14章 近藤譲とポスト構造主義・・・・(129)
第15章 環境芸術から共創成へ : 池田一とアースアート・・・・(136)
15.1 環境芸術とは 15.2 池田一とアースアート
第16章 観察する自己と瞑想・・・ (148)
第17章 一乗法界図から一乗音楽図へ・・・(152)

17.1一乗法界図とは何か
17.2 一乗音楽図 john cage beyond
17.3 Chaosmos≒空 
17.4 マインドフルネス英単語記憶法
第18章 荒川修作 身体から無分別智へ
第19章 不二美=無分別智に相応するアルバム紹介

 


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・作曲家ジョン・ケージと仏教思想:Amazon

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・集団即興音楽とオートポイエーシス ータージ・マハル旅行団を中心にー:Amazon ,楽天kobo,

・仏教と音楽療法の出会い:観察する一乗音界図:Amazon

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芸術メディアの視座 ( 芸術メディア研究会著) タイケン

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