あれは中学2年生だった秋の文化祭のことである。2年と3年生の2つのバンドが出演した。2年生のバンドは都留教博(現在ニューエイジミュージックなどで活躍する作曲家)を中心としたロック・バンドでビートルスの曲を演奏した。それもまあまあ良かったが、3年生のバンドがギター、ピアノ、ドラムという3人編成(ベースはなかった)でジャズを演奏したのである。特にピアノが自由に演奏する姿を見て、とても感動したのである。ジャズって、なんて自由ですばらしいのかと。
その頃、jazz界はソロ・ピアノブームだった。
セシル・テイラー、 マッコイ・タイナー、チック・コリア、キース・ジャレット、スタンリー・カウエルと言ったピア二スト達が続々とソロピアノアルバムをリリースしていました。そんな中、私もジャズピアノが弾きたいと思うようになった。そして、学校帰りに御茶ノ水や銀座の書店や楽器屋に行き何冊がジャズピアノの教則本を購入し弾いてみることにしたのである。
最初に購入したのは次の2冊だった。
しかし、この2つの教本を弾いてみるとどうもジャズの音がしないのである。
と言うのもの左の教本は「ラグタイム」や「ブギウギ」と言ったジャズピアノの古典奏法の教本であって、モダンジャズの教本ではなかったのである。
また、右はVol.1と2があるのだが、こちらの教本は少しは勉強になった。
次に購入したのが左の『ジャズピアノ・テクニック 第二巻 モダンジャズ編』 (日暮雅信/リズムエコーズ: 出版年度未掲載)コードワークについて初歩から解説がなされているわけではないので、一応中級向けの教本のように思う。コード進行、代理和音について、色々実例が示さているのだが、どれも唐突すぎてわかりにくい本だった。
またこの『ジャズピアノ入門』(飯吉馨/全音:出版年度未掲載)は、著者の飯吉馨が当時、芥川也寸志の音楽番組に出演して、あの人の教本かと思いだし購入した記憶がある。コードワークもアドリブも豊富に掲載されているが、コードワークのほとんどは7thまで。アドリブは、バド・パウエルのTranscription(コピーフレーズ)があるなど、かなり参考にはなった。
もっとも後でわかったこどだが、前者『ジャズピアノ・テクニック』はP65〜66、後者『ジャズ・ピアノ入門』にはP32に6小節程度、実際のジャズ演奏で使用するコードワークが掲載されていたのであるが、購入時にはそのことに気づくよしもなかった。要するに情報を小出しにして、多くをオープンにできない時代だったのだろう。
また、高校の音楽の先生(音大の声楽科出身、授業でブルーベックのテ
イク・ファイブのレコードを生徒たちに聴かせていた。)に相談したところ、『ニューヨークの印象』(デイヴ・ブルーベック/東亜音楽社:1966年)(左図)を貸してくださった。
アドリブの掲載はなく、テーマだけだったが、ブロックコードのボイシングなど勉強にはなった。
E♭7の場合、左手はRootを省略して、「G,D♭,F」と弾くのか?など、、、。でもまだまだわからないことだらけだった。(ちなみにこの曲集、付録として「日本の印象」から「Toki's Theme トキのテーマ」が(本書の目次にはなく)なぜかこの曲集の1曲目(4P)に掲載されている。
しかし、まだわからないことだらけだった。
それと、後でわかったことだが掲載曲の「アップステージルンバ」はラテン・リズムを基に12音技法で書かれている、ユニークな曲。ブルーベックはシェーンベルグに学んだので、なるほどなと思う次第。)
そうこうしているうちに ジョン・ミーガン著による
『JazzImprovisationシリーズ』の存在を知った。4巻まであるのだが、1巻、2巻は和訳本で出版されていた。
その 第1巻:音とリズムの原則 (コード・シンボルをII-Ⅴ、 ダイアトニック、クロマティックの3つに分類しているのがわかりやすかった) の巻末に掲載されている他巻の宣伝を見る
と第4巻『Jazz Improvisation Contemporary Piano Styles
1965年)というタイトルの教本を発見。「もしや、これでは!」と思
い、第4巻はまだ和訳本は出版されていなかったので、洋書で購入(左図)。
かなり分厚い本だったが、以下のようなコードワークが示されていた。
弾いてみるとなんと「ジャズの音が」したのである。
とにかく、このジョン・ミーガンの教本のすごいところは、実際のジャズピアノ演奏で使われているChord Workが、最初から示されている点である。
このVoicing を弾いた時の感動は忘れられない。まさにこれこそジャズだと実感したのである。
ようするに説明をすると、Dm→G7→ C というコード進行において、Dmには9thを、G7には9thと13th、Cは6th(=13th)と9thと言う、いわゆるTnson Noteが加えられていたのである。
またその他のコードワークは音域の形によってAフォーム、Bフォームに別れていたが、夢中になって練習。掲載されている様々なコードワークも2,3ヶ月くらいでとりあえずほとんど弾けるようにはなった。
*『ジャズピアノ・テクニック 第二巻 モダンジャズ編』絶版(日暮雅信/リズムエコーズ)出版年度未掲載 1970年前後?
コードプログレッションについてはかなり詳しく書いてある。
当時としては実用価値が高い教本だったと思う。
コードワークについて初歩から解説がなされているわけではないので、一応中級向け
の教本のように思う。
*『Jazz Rock Orchestra SOUND and SCORES《ジャズ・ロックオーケストラ編曲法絶版》』絶版(広瀬雅一編曲著者/大洋音楽株式会社)1972年出版
レコード3枚付き。 当時としては画期的なもの。 トランペット、トロンボーン、サックスセクションについてのハーモナイズが詳しく書かれている。 歌手のバックバンドをジャズオーケストラがやっていた時代を思い出す。
*『ジャズピアノ入門』絶版(飯吉馨/全音楽譜出版社)1966年出版
三和音から入って、9th、11th、13thの和音、コード進行の説明などジャズピアノの演奏に必要な基礎理論は一通り説明されている。
そして、なんと言ってもアドリブの実例が豊富であることが本書の特徴と言える。
また、コードワークの実例も豊富に乗っている。ただし7thまでがほとんどなので
実際の演奏に使われるコードワーク(特にカンピング)も載せるとよかったと思うが「バンドの中でピアニストがどのように演奏しているか」という教本は最近まで出版されていなかったのが実情なのである。
もっとも、「melodyne」のようなソフトウエアが存在する昨今では、アドリブ集などという本はもはや意味をなさないだろう。基礎理論が理解できたら、後は自分でいかようにも学べる時代なのである。
*『ニューユークの印象/ジャズピアノ曲集 ・デイヴ・ブルーベック』絶版1966年出版(油井正一解説/東亜音楽社、音楽之友社)
デイヴ・ブルーベックは、シェ−ンベルグやダリウス・ミヨーに作曲を学んだ、インテリジャズマン、かつてアイビーリーグの若者達に絶大な人気をほこった。(ブルーベックのジャズはスイングしていないという酷評もたびたびされたが)
そしてブルーベックと言えば、「テイク・ファイヴ」に代表される変拍子ジャズと「ヨーロッパ」、「日本」、「USA」と言った一連の印象シリーズである。
この曲集「ニューヨークの印象は」そうした印象シリーズの一つで、「ミスター・ブロードウエイ」というTVのドラマのため書いたものである。
テーマのみで、アドリブの掲載はなし。しかしコードワーク(ブロックコード)の勉強にはなる。それと付録として「日本の印象」から「Toki's Theme トキのテーマ」が(本書の目次にはなく)なぜかこの曲集の1曲目(4P)に掲載されている。
*『First chart 』1971年(van alexander/CRITERION MUSIC CORP )
レコード付き
編曲法の教本だか、全部で113ページというそれほど厚い本ではないにもかかわらず、ブラスやストリングスのボイシング、ポッスのスモール編成、ビックバンドのアレンジなど手短だがよくまとまっている良書。レコードも付いている。
日本のアマゾン(洋書)では入手不可能のようだか、アメリカのサイトでは入手できる。
*『ジャズコード早わかり・ジャズピアノの弾き方』絶版 出版年度不明(日暮雅信/リズムエコーズ)
ラグタイムとブギウギの教本。本書には「ここまで来ればアドリブの基礎は出来上がりです。」
などど書いてある。本当だろうか。
*ジャズコード理論と構成(JAZZ CHORD INSTRAUCTION)絶版 出版年度不明(日暮雅信/リズムエコーズ)
音程、音階の解説から始まって、コード進行のことなど基礎的な説明はしている。
しかし、タイトルのように「ジャズコード理論と構成」というには十分とは言えない内容。
*Professional Arranger
Composer: Book 2
本書は、50年代に書かれた上記の続編であるが、ジャズにとどまらず、セリーやフリー・インプロヴィゼーション、アートと音楽との関係についても書かれている(と言っても音高、音長をドローイングで表現しているだけで、図形楽譜とまではいかないが)
大変すぐれた名著ではないかとおもう。
作・編曲家を志している方はぜひ手に取って見ていただきたい。
1982年版にはレコード、2004年版にはCDが付いている
*『ピアノコードとアドリブ辞典 (PIANO CHORD&AD-LIB ENCYCLOPEDIA)』
絶版 出版年度未掲載(本田利治/東京楽譜出版社)
コード別にアドリブの実例が示されてある。
しかし、音楽も言語であると考えれば、単語(コード)はフレーズやセンテンスの中に覚えるのが有効だと思う。よってコード単体で、アドリブを練習するのはいかがなものか。
『モダンアドリブパッセージとコード進行一覧』絶版(日暮雅信・青井洋/リズムエコーズ)
Keyごとに、アドリブの実例が示されている。
また、オスカーピーターソン、ソニー・クラーク、チャーリー・パーカー、ホレス・シルバー、ウエス・モンゴメリーなどのアドリブも所々掲載されている。
今となってはどうという教本ではないのだが、実用性はある。
*『ジャズピアノ・12のkeyで実習するインブロヴィゼイションの技法』絶版
(藤井貞泰/リットーミュージック)1975年
*『ジャズ・ピアノモード・奏法』絶版(藤井貞泰/リットーミュージック)1975年